その12

迷彩塗装

Part2

ここからは、戦闘車輌らしさを演出するための汚し塗装、いわゆる「ウェザリング」の技法をご紹介いたします。既に作品展示室のこちらのページで、おおまかな解説はしておりますが、今回はより詳細な途中画像も含め、改めて解説しようと思います。
 まずはタミヤエナメルカラーのハルレッドとフラットブラックを混ぜ合わせ、錆とホコリと泥の汚れが混ざりあったような雰囲気の色を作ります。

上で作った色を、エナメルカラー専用うすめ液で薄めます。この際、通常の塗装に使う時よりも、かなり薄く(うすめ液を多く)作るように注意してください。イメージとしては、「ひどく濁ったうすめ液」といったところでしょうか。
 そのうすめた塗料を、幅の広い平筆で、パーツ全体に一気に塗り広げます。ムラなど一切気にせず、手早く塗りましょう。

汚しが必要なすべてのパーツに塗り終えたら、うすめ液をつけたティッシュペーパーやボロ布を使って、塗料を軽く拭き取ります。こうすることにより、スジ彫りや奥まったモールドの部分に塗料が残り、あたかも屋外で長期間酷使されたかのような古びた雰囲気が演出できるというわけです。この作業を、模型の世界では、「ウォッシング」と呼んでいます。

上の作業で塗料を拭き取る際には、どの程度の汚れを演出したいかを考えつつ作業する必要があります。今回は土ぼこりの舞う過酷な戦場で、雨に打たれ、泥にまみれて闘う戦闘車輌を再現することが目標のため、パーツ表面に塗料が多く残るように(拭き取る量を少なめに)注意して作業しました。
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塗料の拭き取りも、ただ漫然と行なうのではなく、ボディの上面に堆積した泥や土ぼこりが雨で流れ落ち、乾燥してこびりついたかのように等々、そのロボットが置かれた環境を想像しながら手を動かすことが重要です。また、その模型のスケールに合わせて、汚れ具合を調整するのも大変重要なポイントです。このヤークトパンターは1/35という比較的大きいスケールなので、ここまで派手に汚してお、スケール的な違和感は少ないと考えられるわけです。
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ウォッシングが完了したら、次はドライブラシを使って、表面に付着している新しい汚れ・・つまり、雨で流れていない乾いた土ぼこりが付着した雰囲気を演出します。ここでは、タミヤエナメルカラーのデザートイエローを使いました。

このサイトで既に何度もご紹介していますが、筆に含ませた塗料をティッシュやボロ布で拭き取り、筆が生乾きになった状態を作り出します。これが「ドライブラシ」たる所以ですね。この、塗料の拭き取り加減を文章で表現するのは大変困難なので、是非とも実際に経験を積んで、感覚を身につけてください。

上の要領で塗料を拭き取った筆の毛先を、パーツ表面にかすらせるようにして、デザートイエローを少しずつ乗せて行きます。強くこすり過ぎると筆目が残って実感を損ねますし、弱すぎればドライブラシの意味を為さない、なんとも難しいイメージの作業ですが、慣れてしまえば実に楽しい技法です。

左のパーツはドライブラシ前。右はドライブラシ後の状態です。右の方は、モールドのエッジが際立ち、より立体的に見えていると思います。

今回のように基本色が緑系統の場合、デザートイエローのドライブラシでエッジを際立たせることによってハイライト効果が生まれ、グラデーションをかけたような立体感が得られます。ひとくちに汚し塗装と言っても、文字どおり汚すことが目的ではなく、「キレイに汚す」ことが最大の目標になるわけですね。

ウォッシングとドライブラシを終えたら、GSIクレオス製Mr.カラーのスーパークリアーつや消しを吹き付け、全体のつやを整え、ようやくすべての塗装が終了となります。前ページの、迷彩塗装を終えたばかりの状態と較べると、かなり色のトーンが落ち着いてオモチャっぽさが払拭され、ちょうど良い雰囲気になっているかと思います。まずこの状態を想定して、そこから基本色の色調を逆算し、決定していたわけですね。ここまで来るのに、どれだけ酷い作品を産み出して来たことか・・・

最後の仕上げに、タミヤエナメルカラーのデザートイエローを専用うすめ液で、通常のエアブラシ塗装と同程度に薄め、パーツ全体に吹き付けますエアー圧を低く、ニードルを思いきり引いて「ふわっと」吹き付けるのがポイントです。これは、ドライブラシだけでは得られない、ホコリっぽい空気感を演出するための手法で、足回りを中心に、上に行くに従って量を減らす様に気をつけつつ吹き付けています。これも、1/35というスケールならではの技法ですね。

すべての塗装を終え、完成したヤークトパンターの胴体部分のアップです。ウォッシングによって、モールドの凹んだ部分は暗く落ち込み、ドライブラシによって凸モールドのエッジは明るく際立ち、より立体的に見えているかと思います。基本色をただのっぺりと塗っただけでは、この効果は決して得られません。手間をかければかけただけ、模型は魅力を増して輝くのです。
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ちなみにこの30mmバルカン砲。ガンプラ等なら、この手の武器はメタリック系の塗料で美しく塗ってしまうのが定石になっていますが、このバルカンは黒と白と微量の赤混ぜ合わせたグレーを3段階の色調で塗り重ね、ウォッシングの後にタミヤエナメルカラーのクロームシルバーで軽くドライブラシを当てて仕上げています。これはスケールを逆手にとった塗装技法のひとつなのですが、使い込まれた鋼鉄の銃身の質感、皆様には感じていただけますでしょうか??
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最後に、今回初めての試みとして、GSIクレオス製ガンダムマーカーのすみいれ筆ペン グレーを使い、足回りに細かいキズをちまちまと描き込んでみました。しかし、残念ながら思ったような効果は今ひとつ得られず(涙)次回は違った方法を試してみようと思います。


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かなり端折ってはありますが、ミリタリー系のメカをよりリアルに仕上げるための基本的な塗装テクニック、それなりに詳しく解説出来たと思います。ただ、文中折に触れて書いた、スケール云々についての事柄は、説明が全然足りていませんので、なんとか機会を見つけて、詳しくまとめてみたいと思っております。
 ともあれ、今よりもっとカッコイイ完成品を産み出したいと日々研究を重ねる皆様に、この記事が役立つことを願ってやみません。どこまで昇っても頂上は遥かな遠方。模型作りって、本当に楽しい趣味ですよね!

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